2017年Eテレで放送していた『超AI入門 人間ってなんだ?』
12月29日放送の特別編は、未来学者レイ・カーツワイル、理論生物学者フリーマン・ダイソン、言語学者ノーム・チョムスキーのインタビューでした
インタビュアーは、サイエンスライターの吉城真由美さん
その中から、レイ・カーツワイル氏のインタビューを備忘録
シンギュラリティー(技術的特異点)
2045年には、人間と AI が融合し、人間の進化が急速に急激に加速するだろう
10年前に、レイ・カーツワイル氏が提唱した『シンギュラリティー』
物理学では、その先が予測不能という意味で『シンギュラリティー』という言葉を使っている
しかし、知性については、その先に何が起こるのかを想定することができる
1981年に「タイミング」というものを考え始めた
テクノロジーのトレンドに注目したところ、「情報テクノロジー」に関しては 、処理速度の推移がはっきりと予測できることが分かった
その変化は「指数関数的」である
脳が誕生した大昔は、脳は直線的に物を見ていた
「あの動物がこっちに進んで、自分がこの道を進めば、あの辺で出会うだろう」と
それで私達の脳は「直線的」に認識するようになり、それで事が足りていた
「直線的」と「指数的」
「直線的」と「指数的」では、30段階で、直線は30だが、指数では10億、40段階で指数は1兆にもなる
「ゲノム解読プロジェクト」では、7年経過した段階で1%の解析が終わった
直線的な人は、全てを解読するのに100年はかかると言うが、私は「1パーセント終わったなら、もうほとんど終わったも同然」と思った
なぜなら、たった7回で100%になる
実際、7年後に解析は終わった
コンピューターの処理速度について言えば、 価格あたりで数十億倍の速さになっているが、大きさは1/100000になった
このままのスピードであと25年経ったら、更に10億倍も早くなり、大きさはさらに1/100000、赤血球ぐらいになるだろう
これが情報テクノロジーの変化である
進化は長寿を選択してこなかった
1000年前は19歳、200年前でも37歳が寿命だった
2030年頃までに、極めて小さい医療用ナノロボットが開発できるようになるだろう
すると免疫系に対して、 血液の中に赤血球サイズのロボットが送り込まれ、健康を維持するようになる
また「仮想現実」も大変な勢いで実現しようとしている
2030年には、仮想現実が神経系の中で行われるため、現実と寸分違わない世界が脳内に実現することになる
そして現実を拡張する「拡張現実」の方は、もう日常となる
何万マイルも離れても、握手だってハグだってできるようになる
思考がインターネットと接続
今まだ直接インターネットにアクセスできないが、装置を使わず脳が直接インターネットにアクセスできるようになる
そうすれば今我々がやってる検索や翻訳だけでなく、人類の知と繋がることで、思考の規模を拡大できる
脳の思考を担う部分には、約100個の神経細胞ユニット が3億個ほどあり、ユニットごとに特有の機能があり、それが積み重なって思考となる
約200万年前、脳の拡大が起こった
脳が大きくなったことで、階層構造が増え、言語が生まれ、芸術や音楽がの誕生がそれに続いた
他の動物ではありえなかった
我々はまた同じことをする時期に来ている
脳の最上層をインターネットにつなげることで、インターネットは人工的な脳として機能しする
思考の拡大は無限になる
2030年代には生物としての脳と人工的な脳が融合するだろう
知能の外側に、知能は作りだせるのか
脳の機能については、大分わかってきている
50年前の脳科学は未熟であったが、思考を担う領域の構造は、それぞれは違っていても、パターンについては同じである
脳についてもすでに十分な情報があるとも言える
「知能」とは、限られた資源を用いて問題を解決する能力だと定義している
人間にとっては限られた資源の一つは、時間だ
短時間で問題を解決できる能力こそ、「知能」と言える
既に人工知能は、囲碁を打つこともできる
自己学習を試みたところ、どんどん腕を上げ最終的には囲碁の名人を破った
人間しかできなかったことが、できるようになっている
タスクの幅が広がっているのだ
車の運転だってかなり広い予測能力が必要である
たまに事故があるが、人間よりましだろう
知能を作ることは、本当に可能なのか
我々が物を忘れる理由の一つは、能力の限界だ
脳の記憶量には限界がある
子供が早く言語を習得できるのは、新しい神経細胞を使い放題だからだ
しかし10代になる頃には知識でいっぱいになり、新しく覚えるには何かを忘れる必要がある
でもコンピューターだって、無限ではない
完璧に記録できるわけではない
能力の機能の特性の一つとして、情報の取捨選択がある
そうしなければ、情報の波に飲まれてしまう
コンピューターが車を運転できるのは、情報の優先順位を判断しているからだ
これは人間的なタスクである
通り過ぎる一本一本の木を認識する必要はないが、飛んでくるボールは注意する必要がある
重要なことに集中するのも知能といえる
機械にもそれができるようになってきた
今そこにある未来
スマートフォンはまだ体内には入っていないが、自分の一部になっている
スマートフォン自体は取り替え可能だが、インターネットでのつながりや個人情報・メール・写真など、これら全てが私自身というものを作り上げている
我々はすでに、一部生物と無生物が 融合をしている存在になっている
無生物的な部分は指数関数的に変化し、生物的な部分は変化しない
私のシナリオでは、スマートフォンのようなものが、赤血球ぐらいの大きさになり、体を健康的に、仮想現実・拡張現実を見せてくれる
機能は飛躍的に伸び、2030年代には人間が部分的には生物的たが 、無生物的部分が何千倍も成長するだろう
最終的には生物的なところは無意味になり、無生物的機能が重要になる
これはさらなる寿命延長にもつながる
無生物的部分はバックアップを作っておけるから、 最終的には不死の存在になるだろう
無生物的部分は、ひとつの身体に閉じ込めておくことができなくなり、100年後には「昔はバックアップが、なかったんだって。なんて恐ろしい生き方をしてたんだ」と言うだろう
テクノロジーとエネルギー
19世紀のテクノロジー(化石燃料など)に、固執してはいけない
再生可能エネルギー資源には、ほとんど限界が無い
ナノテクノロジーを太陽光発電に導入することをお薦してきた
それによってコストは一気に下がる
太陽光発電で供給されるエネルギーは、2年ごとに倍になるだろう
20年以内に人間が必要とするエネルギーの全てを太陽光でまかなえるようになる
他にも風力や地熱を利用すれば、必要なエネルギーの何千倍ものエネルギーを供給できる
テクノロジーの進化が無尽蔵のエネルギーをもたらす理由だ
進化の目的
進化には目的があり、それは「超越」することだ
例えば音は超越して音楽になった
宇宙の情報を読み解くことができる
情報操ることが、進化にとって必須条件である
人類は地球規模で環境に作用する能力を手に入れつつある
自分達が作り出したテクノロジーで自滅する可能性もある
でも我々は、他の生物ができないことができる
最終的には宇宙全体に作用して、宇宙の進化を方向づけるのがゴールだ
進化の過程は、もはや避けて通れない
自ら改良していけるほど知能の高いテクノロジーを生み出すこと
そして人工知能が自己改良し続ける
これがシンギュラリティーだ
人生の意味は、自己増殖を繰り返し進化に向かうのが生命なら、人生の意味はあくまで超越だ
新たな情報の構築物を作り続けることだ
人が自然の創造物だが、それがテクノロジーを生み出し、音楽・芸術・文学・科学、それを生み出すことは、新たな「超越」を行うことだ
これが人生の目的だと思う